
昭和30年代以降の高度経済成長期、東京オリンピックの開催も決まり国内は建設ラッシュに沸きました。 この建設ラッシュを支えたのはコンクリートのポンプ打設の普及で、効率的に次々と新しいインフラや建築物が作られていきました。 しかし昭和40年の半ばごろから、鉄筋コンクリート建築物の外壁のひび割れと、それに伴う外壁からの漏水が大きな問題となりました。 コンクリートのポンプ打設の普及に伴い、水の配合量が多い生コンが多く使われたことで、コンクリートにひび割れが生じやすくなっていたのです。 ちょうどこの頃、昭和48年にアクリルゴム系外壁塗膜防水材が登場し、多くの建物の外壁の改修に用いられ、建物の外壁の美観を復元するだけでなく漏水も止めたことで、広く利用されるようになりました。
昭和50年代になると、建物の早期劣化が問題になりました。 鉄筋コンクリートは鉄筋が腐食すると寿命を迎えます。鉄筋は、周りを密実な高アルカリ性のコンクリートが覆うことで錆びずにいられます。 ところが想定以上に早く鉄筋腐食が生じる事例が起こり始めたのです。 想定以上に早くコンクリートの高アルカリ性が失われる「中性化」、コンクリートは中性化していなくてもコンクリートに塩分が含まれることによって鉄筋腐食を引き起こす「塩害」などが問題となりました。 一方で、昭和40年代から実績を重ねていたアクリルゴム系外壁塗膜防水材を施工した建物では、早期劣化を防止・抑制されている点が注目されるようになりました。 建物の早期劣化は鉄筋が腐食することによって生じます。鉄筋の腐食には水と酸素が必要です。 アクリルゴム系外壁塗膜防水材は、建物の外壁に生じたひび割れに破断することなく追従することで建物の美観を美しく保ち、漏水を止めてきましたが、この機能が建物の外壁に水を浸入させないことに繋がり、 さらには、二酸化炭素、酸素、塩分などの劣化要因の浸入をも抑えることで、建物の早期劣化を防止・抑制することができていたのです。
外壁塗膜防水材の建物の早期劣化を防止・抑制する機能や効果を、躯体保護機能や長寿命化効果と言いますが、現在では外壁塗膜防水材の重要な機能の一つに位置付けられています。 外壁塗膜防水材のこの長寿命化効果は、昭和50年代から盛んに研究され、数々の研究成果が学会発表され、著名な基準書の参考文献として多く引用されるようになりました。 その結果として、一般の建築物はもとより、重要な構造物などでも外壁塗膜防水材が多く採用され現在に至っています。 建物の長寿命化の必要性が叫ばれるようになった一つの象徴的な出来事に、1997年に日本建築学会がCOP3京都会議で「日本の建築物の寿命を現状の3倍に伸ばす」と宣言したことが挙げられます。 世界的懸案である「地球温暖化防止」の枠組みの中で、日本の建築業界が取り組むべきは「建築物の寿命を延ばすことである」と宣言されたのです。 建築物の寿命を延ばす取り組みの中で、建物の劣化を防止して長寿命化を果たす点こそが、現代における外壁塗膜防水材の役割です。
前述の通り、外壁塗膜防水材の基本的な機能は、外壁に生じたひび割れに破断することなく追従することによって発揮されます。この機能を「ひび割れ追従性」と呼んでいます。 ひび割れ追従性は、高い伸び性能を持ち、かつ、それが長期に維持される防水材の性能によって達成されますが、材料の性能だけでは決して十分とは言えません。 規定通りの膜厚が確保され、均一でピンホールの無い施工が行われることが前提になります。事実、ひび割れ追従性は膜厚に比例して大きくなたり小さくなったりする性質があるのです。 すなわち、優れた材料と優れた施工が一体となって完成するのが外壁塗膜防水材であると言えます。 外壁塗膜防水材の施工が、その材料に習熟した施工業者によってのみ行われる体制のことを私たちは「責任施工体制」と呼びますが、 日本外壁防水材工業会は、外壁塗膜防水材の責任施工を推進しています。
外壁用塗膜防水材のメーカー団体である日本外壁防水材工業会(NBK)は、その施工団体である外壁防水施工団体協議会(GSK)と一体となって事業を推進し、外壁塗膜防水材の信頼性を益々高めていきたいと考えています。
日本外壁防水材工業会
会長 入田 一